外壁塗装を考えている方にとって、「どの塗料を使うか」や「費用はいくらかかるか」という点は大きな関心ごとでしょう。しかし、それと同じくらい重要なのが「外壁の下地材の種類」に応じた塗装方法の違いです。
下地材には、コンクリート、サイディング、モルタル、金属（トタン・ガルバリウム）、木材など、さまざまな素材があり、それぞれに適した塗料や施工方法があります。これらを正しく理解せずに塗装を進めると、せっかくの外壁が数年で剥がれたり、劣化が早まる原因になりかねません。
今回の記事では、以下のようなポイントを中心に、外壁の下地材別に押さえておくべき塗装のポイントをわかりやすく解説します。
※外壁塗装で知っておきたい、塗料・塗り方・下地処理などの種類について、詳しく知りたい方は『外壁塗装の種類を徹底比較！知っておきたい塗料・塗り方・下地処理を横浜市の塗装のプロが解説』をご覧ください。
目次
外壁塗装における「下地材の違い」とは？
外壁塗装とひと口に言っても、実はその仕上がりや耐久性は「下地材の種類」によって大きく異なります。下地材は家の外観や性能に深く関わる重要な要素であり、それぞれの素材には特徴や弱点が存在します。たとえば、コンクリートはひび割れや中性化、サイディングは吸水や反り、モルタルはクラックといったように、素材特有の劣化現象も見られます。
ここでは、代表的な外壁材として使われるコンクリート・サイディング・モルタルの3つについて、それぞれの特徴や塗装時の注意点を詳しくご紹介します。
コンクリート外壁の特徴と塗装方法
コンクリート外壁は、重厚感があり、無機質なデザインが魅力の素材です。耐火性や遮音性に優れており、マンションや高級住宅に多く使用されています。しかし、経年劣化により「中性化（アルカリ性を失うことで内部鉄筋が錆びやすくなる現象）」や「ひび割れ（クラック）」が発生しやすく、これが雨水の侵入や構造劣化の原因になることもあります。
そのため、コンクリート外壁に塗装を行う際は、素材の特性を理解したうえで適切な処理が欠かせません。まず、劣化部分の補修（クラック補修や脆弱部の除去）を丁寧に行ったうえで、中性化を防ぐための「中性化防止材」や「弾性塗料」を使用するのが一般的です。また、吸水性があるため、下塗りにはシーラー（密着性を高める塗料）を使用し、上塗りは耐久性・防水性に優れた塗料を選ぶのが効果的です。
コンクリートは一見頑丈そうに見えますが、適切なメンテナンスを怠ると、建物全体の劣化を早めるリスクがあります。塗装前の状態チェックと、専門的な処置が不可欠な素材です。
サイディング外壁（窯業系・金属系）の違いと注意点
サイディング外壁は、現在の戸建住宅で最も多く使われている外壁材で、大きく分けて「窯業系サイディング」と「金属系サイディング」があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、塗装時の注意点も異なります。
まず、窯業系サイディングはセメントを主成分とし、デザイン性が高く施工も容易なことから広く普及しています。ただし、吸水性が高いため、表面の塗膜が劣化すると水分を吸い込んでしまい、膨張・収縮により反りやひび割れが発生しやすくなります。そのため、塗装前には高圧洗浄で汚れを除去し、シーラーやフィラーで吸水を抑える処理が必要です。また、パネル同士の継ぎ目に充填された「シーリング（コーキング）」材も経年で劣化するため、打ち替えや増し打ちが必要です。
一方、金属系サイディングは、トタンやガルバリウム鋼板といった金属素材で作られており、軽量で耐久性に優れ、モダンな印象の外観が特徴です。ただし、サビの発生が最大の懸念点であり、塗装前にケレン作業（サビや古い塗膜の除去）を行い、防錆プライマーを下塗りするのが重要です。ガルバリウムは耐久性が高い反面、塗膜の密着性を確保するには専用のプライマーを使用する必要があります。
このように、サイディング外壁は見た目こそ似ていても、素材によって適切な施工方法が異なるため、正しい判断と丁寧な作業が求められます。
モルタル外壁の特徴と補修ポイント
モルタル外壁は、職人が手作業で仕上げるため、独特の質感や風合いがあり、和風・洋風を問わずさまざまな建物にマッチする人気の外壁材です。主にセメントと砂、水を混ぜた材料を壁に塗り重ねて施工されるため、自由なデザインが可能で、リシン吹き付けやスタッコといった仕上げも魅力の一つです。
しかし、モルタルは非常に硬くて丈夫な一方で、経年とともに「クラック（ひび割れ）」が発生しやすい素材でもあります。特に建物の揺れや乾燥収縮の影響を受けやすく、ひび割れを放置すると雨水の侵入や内部の腐食につながる恐れがあります。
そのため、モルタル外壁に塗装を行う前には、クラックの補修が非常に重要です。小さなひび割れにはフィラー（下地調整材）を使い、大きな亀裂にはシーリング材を充填してから塗装工程に入るのが基本です。また、下塗りには厚みがある微弾性フィラーを使用することで、細かなクラックをカバーし、仕上がりの美しさと防水性を向上させる効果もあります。
さらに、モルタルの表面は塗料の吸い込みが激しい場合があるため、下地の状態に応じて適切な下塗り材を選び、塗布回数も調整する必要があります。見た目の美しさを保ちつつ、長持ちさせるには、素材に合った丁寧な施工が不可欠です。
木材・金属など特殊素材の外壁塗装はどう違う？
外壁の素材はコンクリートやサイディングだけではありません。住宅の個性やデザイン性を重視する人の間では、木材や金属といった「特殊素材」の外壁が選ばれることも増えています。これらの素材は見た目に独特の魅力がありますが、塗装の際には特有の注意点やメンテナンスが必要です。
素材の性質によって塗料の密着性や劣化の仕方が大きく変わるため、誤った施工を行うと数年で塗膜が剥がれたり、腐食が進んでしまう恐れもあります。ここでは、木材外壁、トタン外壁、ガルバリウム鋼板外壁の3つの特殊素材について、それぞれの特徴と塗装・メンテナンスのポイントを詳しく解説します。
木材外壁の塗装とメンテナンス
木材を使用した外壁は、自然素材ならではの温かみや柔らかさを感じられ、ナチュラルで落ち着いた雰囲気を演出できます。和風建築だけでなく、北欧スタイルやカントリー風の住宅にも好まれる素材です。しかしその一方で、紫外線や雨風の影響を受けやすく、メンテナンスには細やかな注意が求められます。
特に注意すべきは「吸水性の高さ」と「腐食・虫害のリスク」です。木材は水分を含みやすく、湿気によって膨張・収縮を繰り返すため、塗膜のひび割れや剥離が起こりやすい素材です。また、シロアリや腐朽菌などの被害を受けるリスクもあるため、防腐・防虫処理は欠かせません。
塗装においては、木材専用の塗料（ステイン系やオイル系など）を使用するのが基本です。これらの塗料は、木の呼吸を妨げず、木目を活かした仕上がりが可能です。ただし、耐久性はウレタンやシリコン系の塗料に比べて劣ることが多く、こまめなメンテナンスが必要となります。
定期的な点検と再塗装を繰り返すことで、木材外壁の美しさと耐久性を長く保つことができます。自然素材を活かした家づくりを選んだ方にとって、正しい塗装方法の理解は不可欠です。
トタン外壁の塗装で押さえるべきポイント
トタン外壁は、昭和期の住宅や物置、工場などによく使われていた金属素材で、非常に軽量で施工がしやすいという特徴があります。近年では少なくなったとはいえ、今でも一部の地域や古い住宅で見ることができます。コストが安価で手軽に施工できる反面、注意しなければならないのが「サビの発生」です。
トタンは亜鉛メッキ鋼板で作られており、空気や雨水にさらされることで徐々にメッキが劣化し、やがて鉄の部分が露出して赤サビが進行します。サビが進むと塗膜もはがれやすくなり、穴あきなどの大きな劣化につながるため、早めのメンテナンスが不可欠です。
塗装を行う際は、まずサビや劣化した塗膜をしっかり除去する「ケレン作業」が非常に重要です。これを怠ると塗料が密着せず、すぐに剥がれてしまいます。下塗りには防錆効果のあるプライマー（防錆プライマー）を使い、その上から耐候性のある塗料を重ねることで、長持ちする仕上がりが期待できます。
また、サビの進行がひどい場合には、塗装だけでは対処できず、部分的な張り替えが必要になることもあります。状態を見極めたうえで、最適な施工方法を選ぶことが大切です。
ガルバリウム鋼板外壁のメンテナンスと注意点
ガルバリウム鋼板は、近年の新築住宅やリフォームで非常に人気のある外壁材です。アルミニウム・亜鉛・シリコンの合金でメッキされた鋼板で、従来のトタンと比べてサビに強く、耐久性・耐候性に優れた素材とされています。軽量でありながらも頑丈で、モダンなデザインとの相性も良いため、多くの住宅に採用されています。
しかし、どれほど耐久性に優れているとはいえ、ガルバリウム鋼板も「メンテナンスフリー」ではありません。表面に傷がつくと、そこから白サビや赤サビが発生することがあり、放置すると塗膜の劣化や腐食につながります。特に、海沿いなどの塩害地域では注意が必要です。
塗装メンテナンスの際には、素材に合った専用の下塗り材（プライマー）を使用することが不可欠です。通常の金属用塗料では密着が不十分になる場合があり、専用プライマーを使うことで塗膜の持ちを大きく向上させることができます。また、高圧洗浄やケレン作業など、下地処理も丁寧に行う必要があります。
さらに、ガルバリウム鋼板は熱伝導率が高く、塗料によっては熱を吸収しやすくなるため、遮熱塗料を選ぶなどの工夫も有効です。見た目と性能を長く保つためには、適切なタイミングでの塗装と、専門的な施工が重要です。
外壁塗装を成功させるためのポイント
外壁塗装は、ただ塗料を塗るだけの作業ではありません。家の外壁がどのような素材でできているかを正しく理解し、それに合った塗料や施工方法を選ぶことが、塗装の仕上がりや耐久性に大きな差を生みます。
また、素材に合った施工を行うには、施工業者の知識と技術が欠かせません。安易に価格だけで業者を選んでしまうと、数年で塗膜が剥がれてしまうなど、思わぬトラブルにつながることもあります。
この章では、外壁塗装を成功させるために押さえておきたい「塗料選び」「業者選び」「事前調査」の3つのポイントについて詳しくご紹介します。
下地材に合った塗料選び
外壁塗装を長持ちさせるためには、「どの塗料を使うか」が非常に重要です。ただし、優れた塗料であっても、下地材との相性が悪ければ本来の性能を発揮できません。素材に適した塗料を選ぶことで、塗膜の密着性や耐久性が高まり、メンテナンスの頻度も減らすことができます。
たとえば、コンクリート外壁には弾性のある塗料や中性化を防ぐ機能を持つ塗料が適しており、モルタル外壁にはクラック対応に優れた微弾性フィラーと組み合わせた塗装が効果的です。金属外壁の場合は、防錆性を持つ塗料や専用プライマーが必須となります。また、木材外壁には通気性があり、木の呼吸を妨げない自然系塗料が向いています。
汎用的な塗料を使い回すのではなく、素材ごとの特性を理解し、それに合わせた塗料選定を行うことが、外壁の美観と性能を長く保つ鍵になります。
信頼できる業者の選び方
外壁塗装の成功を左右するもう一つの大きな要素が、「施工業者の選定」です。どれほど良い塗料を使っても、施工技術や知識が不十分であれば、本来の耐久性や美しさは実現できません。信頼できる業者を選ぶためには、いくつかのチェックポイントがあります。
まず確認したいのは、業者の「実績」です。過去の施工事例をしっかりと公開しているか、さまざまな外壁素材に対応した実績があるかを確認しましょう。また、「下地材の種類に応じた施工経験があるかどうか」も重要です。特に木材や金属系の外壁は専門的な知識が求められるため、その対応力は信頼性のバロメーターとなります。
次に、見積書の内容にも注目しましょう。塗料の種類や使用量、下地処理の内容が明記されているか、コーキングの打ち替えなど細かな作業まで記載されているかを確認します。曖昧な記載や一式表記が多い業者は注意が必要です。
最後に、「保証内容」や「アフターフォロー」も業者選びのポイントです。施工後に何か問題があった場合、迅速に対応してもらえる体制が整っているかどうかは、長く安心して暮らすうえで重要な判断材料となります。
塗装前の現地調査の重要性
外壁塗装を成功させるためには、施工前に行う「現地調査」が非常に重要です。外から見ただけではわからない下地材の劣化や不具合が、塗装の仕上がりや耐久性に大きく影響を与えるためです。
現地調査では、外壁の素材を正確に確認し、ひび割れ・反り・浮き・サビなどの劣化症状を細かくチェックします。また、築年数や前回の塗装時期、周囲の環境（海沿い・山間部・都市部など）も考慮して、最適な施工方法と塗料を提案するための基礎資料となります。
特に、コーキングの劣化や下地の脆弱化など、見落とされがちな部分をしっかり確認できる業者は、信頼に値します。調査をもとに具体的な診断書や写真付きの報告書を出してくれる業者であれば、説明の透明性も高く安心です。
なお、無料で現地調査や劣化診断を行っている業者も多く、複数社に依頼して比較することも可能です。納得のいく提案を受けるためにも、調査の段階からしっかりと取り組むことが大切です。
まとめ～横浜市の外壁塗装・屋根塗装のことなら
本記事では、下地材の種類別に外壁塗装のポイントを詳しくお伝えしました。
外壁の下地材には、コンクリート・サイディング・モルタル・木材・トタン・ガルバリウム鋼板といったさまざまな素材があり、それぞれに適した塗料や施工方法が存在します。下地材に合わない塗装を行うと、せっかくの工事も数年で塗膜が剥がれるなど、思わぬトラブルにつながる恐れがあります。
塗装を成功させるためには、まずは自宅の外壁がどのような素材でできているのかを把握すること。そして、その素材に最適な塗料と施工を提案してくれる信頼できる業者を選ぶことが何よりも大切です。
正しい知識と準備をもって外壁塗装に臨むことで、大切な住まいを長く、美しく守ることができます。ぜひ今回の内容を参考に、ご自宅の外壁と向き合ってみてください。
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この記事の著者について
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2021年3月31日、はじめて執筆の書籍「リフォームで一番大切な外壁塗装で失敗しない方法」をクロスメディア・パブリッシングより出版。（各図書館に置かれています）
「初心忘るべからず」という言葉を胸に、毎日お客さまの信頼を得られるよう頑張っています。 世の中には不誠実な業者も多く、リフォームで後悔する人が後を絶ちません。
一人でもそういう方がいなくなり、私たちが地元の皆さまに貢献できればと思っています。川崎市・横浜市にお住まいで、外壁塗装についてお悩みの方はお気軽にご相談下さい。(会社概要・本店について｜青葉店はこちら)
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